ショウジョウバエは、遺伝学のモデル生物として100年以上前から、使われてきました。特に概日周期変異ピリオドの発見が、その後の哺乳類の時計遺伝子の発見にもつながりました。睡眠研究の対象となったのは、最近10年ほどですが、私たちはショジョウバエの睡眠が、人間と同じようにドーパミンで制御されていることを、世界で最初に発見し、ショウジョウバエの睡眠研究をリードしてきました。行動が似ているだけでなく、学習記憶の強化に必要であることや、代謝や加齢により影響を受けることなど、生理学的にも似ていることから、さらに研究を進めています。
日本人の5人に1人は、睡眠に何らかの悩みを持っています。若い人は、睡眠時間の不足から、日中の眠気に悩むことが多いですし、高齢者では眠れないことに悩む人が増えます。私たちは、睡眠障害の診療、インターネット上の活動、さらに、企業との共同研究などによって、日本人の睡眠障害と眠りの悩みについての臨床研究・疫学研究・治療法開発・啓発活動などを行い、日本人の眠りを良いものする活動を行っています。
指を切ったり、熱いものに触ったりすると痛みを感じます。
このような痛みは、人が生きていくために必要な感覚ですが、体に何も異常がないのに痛みを感じることは、日常生活の質を低下させます。
このような痛み=慢性疼痛は、全世界で2,200万人の人たちを苦しめています。
慢性疼痛の有効な治療法は未だ見つかっていないため、多くの人がその治療法を求めています。
私たちは慢性疼痛の動物モデルを作り出し、慢性疼痛では痛みが伝わりやすい状態になっていることを明らかにしました。
痛みは気分によって感じかたが違うことから、脳の中でどのような処理が行われ、痛みが感じられるかについて研究を進め、不必要な痛みを制圧すべく研究を進めています。
生活習慣の欧米化にともない肥満や糖尿病、高血圧といった生活習慣病患者が増えています。
自覚症状が少ないためこれら疾患は放置されやすいのですが、ゆっくりと確実に体の機能を壊していきます。脳も例外ではなく、糖尿病患者は認知症になる危険性が高いことがわかっています。
私たちは糖尿病や肥満の時の脳機能を研究し、記憶や学習の障害や不安感受性の亢進などの高次脳機能が障害されていることを明らかにしました。
一方、糖尿病や肥満がどのように高次脳機能を障害するのかについては、明らかになっていません。
糖尿病や肥満の脳では何が起こっており、どのように障害が進んでいくのか、どのような薬物に治療効果が望めるのかについて研究を進めています。
がん患者には末期を象徴する症状として極度の痩せの状態が見られます。 この状態はがんの進行の自然な成り行きとされていましたので、治療法の確立は十分に行われていませんでした。 しかし、がん患者に特異的なやせ細りはがん悪液質とよばれる栄養不良の結果であることがわかりました。 がん悪液質では、食事で得た栄養を体が利用することができなくなってしまいます。 これによって腫瘍組織に栄養がたくさん供給され、がんの進行をより加速させます。 もし、がん悪液質を制御できたら、元気な状態で体を維持できますので、抗がん剤を使った治療を長く続けたり、末期の状態でも美味しいものを食べたり、旅行ができるかもしれません。 私たちは、末期がんにみられる苦痛の根本に悪液質があると想定し、がんが悪液質をおこすメカニズム解明と治療を可能にする薬を探索しています。
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