新論文紹介New press

発表論文紹介

 熊本大学時代から、一緒に研究を続けている冨田淳先生の論文です。また、熊本大学大学院生の光吉まどか(現・広瀬まどか)さんが多くの実験を行いました。
 この研究では、まず不眠のハエ(fumin 変異)と野生型のハエの脳(頭部)での遺伝子発現の比較を行い、発現量に差があった遺伝子群が睡眠に関する機能をもつかスクリーニングを行いました。そして見つかったものの一つが、NMDA型グルタミン酸受容体です。
 グルタミン酸受容体は脳の広い部位に発現していますが、これまでの研究結果から、広い範囲でその機能を低下させると、睡眠に影響が出ますが、狭い範囲では影響が出ません。これは、私たちが同じ方法で見つけて報告したカルシニューリン遺伝子の性質と似ています。一方、これも私たちが見つけたドーパミントランスポーター遺伝子は、ドーパミン神経という、ごく一部の神経細胞にだけ発現していて、睡眠覚醒に影響を与えます。これまで見つかっている睡眠関連遺伝子は、このように広い範囲で必要とされるものと、狭い範囲で必要とされるものがあり、この結果は、睡眠という脳の状態を考える上で、とても重要です。

Jun Tomita, Taro Ueno, Madoka Mitsuyoshi, Shoen Kume and Kazuhiko Kume

PLoS ONE 10(5): e0128101: DOI: 10.1371/journal.pone.0128101


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